私は新しい生命の誕生を前に、ずっと「きょうだい児であること」が心に引っかかっていました。もし自分の子どもに障がいがあったらどうしよう?私は本当に育てていけるのだろうか?――そんな不安を抱いたのです。
この記事では、きょうだい児である私の視点から、ASD(自閉スペクトラム症)の遺伝リスクについて、医療従事者としての知識と文献をもとに整理していきます。
結論から言うと、叔父や叔母にASDがある場合、その子ども(つまり甥・姪)がASDとなる確率はおよそ3〜5%程度とされています。一般的な発症率(約1.5%)と比較すると、2〜3倍にあたります。その数字を多いと取るのか、思ったよりも少ないと感じるのか。
本文では、文献から調べたこと、そして「リスクがあると知った上で、どのように向き合えばよいか」について触れていきます。同じ思いを抱える方の一助になれば幸いです。
「きょうだい」から自分の子への遺伝
きょうだい児として抱いた不安
自分の子供に障害があったら・・・?
私は、決して当事者の方々を否定したり批判したりしたいわけではまったくありません。
でも――
きょうだい児として育ってきた中で、いろんな出来事を経験し
泣いたこともたくさんあります。親が苦労した姿も見てきました。
大変さがわかるからこそ、辛い体験や悲しい思いを
自分の子どもにはさせたくない。けど、自分は親になって子育てをしてみたい
という気持ちの間で何度も揺れてきました。
きょうだい児の中には、交際相手の親から結婚を反対されたり
子どもに遺伝するんじゃないかと距離を取られた経験がある人もいると思います。
私も、かつてそのような経験をした一人です。
だからこそ、「事実を知っておきたかった」んです。
ただ漠然と怖がるのではなく、自分で確かめたかった。
「知らない恐怖」より、「知った上で考える」ことをしたかった。
同じように悩んだあなたへ。
今、悩んでいるあなたへ。
ASDの遺伝リスクってどれくらい?
調べていく中で、とある研究に出会いました。
それによると、
叔父や叔母にASDのある子どもがASDになる確率は、およそ3〜5%ほど。
一般的な発症率(約1.5%)と比べると、2から3倍ほど高くなるそうです。
ですが、絶対的なリスクとしては依然として低いと言えます。
また、親の性別による違いもほとんどなく
ASDの兄弟姉妹がいる親が母親でも父親でも、子どものリスクは大きく変わらないそうです。
Bai, D., Marrus, N., Yip, B.H.K., Reichenberg, A., Constantino, J.N., & Sandin, S. (2020).
Inherited Risk for Autism Through Maternal and Paternal Lineage.
Biological Psychiatry, 88(6), 480–487.
この論文は、査読付き国際誌「Biological Psychiatry」に掲載された正式な学術研究です。
リスクをどう受け止めるか
3〜5%と聞いて、
「え…2~3倍のリスクなんだ…」と落胆するというより、
「思っていたより低いかも」と感じました。
知らないまま怖がっていた頃より、確かに少しだけ気持ちは軽くなりました。
同じ悩みを持つ人へ伝えたいこと
この記事はきょうだい児として母になった私が
ただまっすぐに向き合った気持ちを綴ったものです。
もしかしたら、この文章が
同じように「怖い」と感じている誰かの、小さな安心につながるかもしれない。
そう思って、書きました。
同じ思いを抱えた方の、ほんの少しの支えになれば幸いです。
管理人 Cocone


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